大阪地方裁判所堺支部 昭和29年(モ)203号 判決
債権者が債務者に対し昭和二十九年五月十日債務者がLILAC、ライラツクなる商標登録出願をしたことを理由の一として当裁判所昭和二九年(ヨ)第二七号仮処分申請事件につき、「債務者は債権者が別紙各商標を自動自転車及びその附属品、部品等に使用する事並びに之等を販売拡布することを差止める一切の行為をしてはならない」との仮処分決定を得たこと(以上右仮処分決定を第一仮処分と略称する)、債権者は昭和二十九年八月六日債務者が更に「来楽(ライラツク)」の商標登録出願をしたことを理由の一として当裁判所昭和二十九年(ヨ)第五六号仮処分申請事件につき右第一仮処分決定と同一の仮処分決定(以下第二仮処分と略称する)を得たこと、右第一、第二各仮処分事件につき債務者より夫々異議の申立があり、前者については当裁判所昭和二九年(モ)第一三八号仮処分異議事件として、後者については本件異議事件として夫々当裁判所に繋属中、前者については昭和三十一年九月二十二日休止満了となつたことは夫々当裁判所に職務上顕著な事項である。そして右第一、第二各仮処分決定を対比するに、両者は申請の理由を異にするとは謂いながら当事者、被保全権利、仮処分決定主文に於て同一であつて、第一仮処分決定の存続する限り第二仮処分申請はそれ自体保全の必要性を欠く不適法なものとして所詮却下を免れ難いこと明白である。而して右第一仮処分は昭和三十一年九月二十二日休止満了となつたこと前記の通りであつて、仮に仮処分異議事件の休止満了が単に異議申立の取下としての効果を持つに過ぎないとすれば、右第一仮処分は右休止満了にかかわらず依然存続し第二仮処分決定はその保全の必要なきものとして到底取消を免れない。よつて右休止満了の効果について考察すると、債務者の異議申立は仮処分決定をして直ちに失効さすものでなく、当該異議事件の判決により取消されて始めてその効力を失うものであるから、異議事件に於ける休止満了は単に裁判所をして異議の当否についての判断をなすことを不必要ならしめるに止り、当該仮処分決定は依然としてその効力を保持するもので、休止満了は当該仮処分申請自体の取下の効果を生ずるものとはなし難く、単に異議申立の取下の効果を生ずるに過ぎず、第一仮処分命令は依然存続しているから右第二仮処分は保全の必要を欠く不適法のもので、本件異議申立は理由があると謂うべきである。尚債権者は昭和三十一年十一月二十二日の口頭弁論期日に於て債権者のLILAC、ライラツクなる商標が登録されたことを理由として、債務者が右各商標を使用することを禁止すべき旨の仮処分命令を求めているけれども、異議事件は単に既になされた仮処分決定の当否を判断するものであることに鑑み、債権者が更に新な仮処分を求めることは許されないと解すべきであつて右申立も理由がない。